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あの人は、僕があの人の事を想ってるって事……知らないから……
あの人は、僕が好きなのは、あの人の後輩だと…… そう思ってるから……
まぁ、そう思わせたのは僕なのだけど
あいつは、私の後輩に想いを寄せている
そう公言している
あいつは、私の事を頼りになる姉貴なんて、のたまっているから……
私は、あいつを好きだなんて言えないんだ
誰にも
「いってきま〜す」
慌しく玄関を飛び出すと、途端、朝の忙しない空気が鈴音を包みこんだ。
バスを待つ人達の長い列も、朝のラッシュのざわめきも、慣れきった朝の光景だけど、未だにその忙しない空気に、おいでおいでされるように中に引きずり込まれると、うんざりしてしまう。
沢木鈴音、二十八歳。一応、女――ではあるけれど、かわいいねなんて生まれて此の方、一度も言われたことはない。
ううん。少なくとも赤ん坊の頃には言われてたかな、流石にね。
かわいいって言われない赤ん坊っていうのも、また余りにも居た堪れないしね。
周りからの評価は、大概、頼りになる・さばさばしてる・かっこいい(女だっつ〜の)
そんな感じかな。
別に、かわいいなんて柄じゃないのは自分でも分かってるし、それを期待してるわけでもない。だけど、時にはそう言って欲しいって思うとき、女なら誰でもあるじゃない?
昨日もまた、あいつに「さすが先輩、頼りになるなぁ」なんて暢気に拍手されて……
あいつは褒めてるつもりなんだろうけど、ね。
そういう台詞……言われなれてる筈なんだけど、そんな一言を、らしくなくずっと引きずっちゃって昨日はなかなか眠れなかった。
そのせいで、慌てて駅に向かって走ってるってわけ。
慌しく玄関を飛び出すと、途端、朝の忙しない空気が鈴音を包みこんだ。
バスを待つ人達の長い列も、朝のラッシュのざわめきも、慣れきった朝の光景だけど、未だにその忙しない空気に、おいでおいでされるように中に引きずり込まれると、うんざりしてしまう。
沢木鈴音、二十八歳。一応、女――ではあるけれど、かわいいねなんて生まれて此の方、一度も言われたことはない。
ううん。少なくとも赤ん坊の頃には言われてたかな、流石にね。
かわいいって言われない赤ん坊っていうのも、また余りにも居た堪れないしね。
周りからの評価は、大概、頼りになる・さばさばしてる・かっこいい(女だっつ〜の)
そんな感じかな。
別に、かわいいなんて柄じゃないのは自分でも分かってるし、それを期待してるわけでもない。だけど、時にはそう言って欲しいって思うとき、女なら誰でもあるじゃない?
昨日もまた、あいつに「さすが先輩、頼りになるなぁ」なんて暢気に拍手されて……
あいつは褒めてるつもりなんだろうけど、ね。
そういう台詞……言われなれてる筈なんだけど、そんな一言を、らしくなくずっと引きずっちゃって昨日はなかなか眠れなかった。
そのせいで、慌てて駅に向かって走ってるってわけ。
走ったかいあって、ホームに入ったと同時に電車が滑り込んできた。ぎりぎりセーフってとこか。
そして、またいつものように、押し合いへし合い、電車の中になだれ込んだ。
おしくらまんじゅうしながら会社に向かう電車の中、ふといつもは感じない視線を感じた。
思わず目をあげると……誰だろう
少し離れた所にいる男性が、じっとこちらを見ていた。
揺れる電車の中で、その視線は決して揺らぐ事は無く、私の体を貫き、心臓までもを鷲掴みにされているようで……
背筋をわけの分からない物体が這い上がってきて、私は、思わず身震いすると下を向いた。
それから駅につくまで、怖くて顔をあげる事すら出来なかった。
クーラーががんがんきいているというのに、変な汗が背中を滴り落ちる。
『何かが見ている』
見ているのは、確かに少し離れたところにいる男性なのだけど、その視線は人を感じさせないもののような気がして……。
男の目を思い出すと、また汗が流れ落ちる。
『怖い 怖い 怖い 怖い 怖い…………』
気を緩めると、まるごと飲み込まれてしまいそうだ。
前に立つおじさんの革靴をじっと睨み付け、カバンをぎゅっと抱え込む事で、かろうじて意識を保つ。
どれくらいの時間が経ったのだろう。
『もう駄目……』体中の血が全て地面に吸い込まれてしまったかのようだ。自然、体の力も抜け、気を失いかけた時
「大阪〜大阪〜」
助け舟のようにアナウンスが耳に滑り込んできた。
いつもの何十倍もの時間をかけて、この駅にたどり着いたような気がする。
だけど、ともかく助かった……未だに視線は感じるけれど、流石に電車を降りてまで追ってはこないだろう。
そう考えながらも、内心、追ってくるかもしれない、追ってきたらどうしよう
そんな不安が頭をうずまき、気だけが逸る。
『もう駄目……』体中の血が全て地面に吸い込まれてしまったかのようだ。自然、体の力も抜け、気を失いかけた時
「大阪〜大阪〜」
助け舟のようにアナウンスが耳に滑り込んできた。
いつもの何十倍もの時間をかけて、この駅にたどり着いたような気がする。
だけど、ともかく助かった……未だに視線は感じるけれど、流石に電車を降りてまで追ってはこないだろう。
そう考えながらも、内心、追ってくるかもしれない、追ってきたらどうしよう
そんな不安が頭をうずまき、気だけが逸る。
